銀婚湯は道南の八雲町にある温泉宿で、私が学生時代から行きたいと思っていた宿。
なんで行きたいと思っていたのかは忘れてしまったけれど、
多分じゃらんでそれまで見たこともない独創的な野天風呂の写真をみたからだったかな。
今回念願かなって宿泊することができた。
中に入ると気持ちの良い板張りで、まるで銭湯の番台のようなアットホームな雰囲気を受付から感じる。
その雰囲気は電話予約した際にも伝わってきて、滞在中一度も覆ることはなかった。
子供にも優しく接していただけて、家族みんな大好きな宿になりました。
受付にはこんな恐ろしいお知らせが。時期は8月上旬。
虫よけなどグッズは持ってきたが対応できるだろうか?
部屋の資料には温泉の詳しい説明が載っていて、荷物の整理もそこそこに早速野天風呂へ。
滞在中に野天風呂5個のうちトチニの湯以外の4つは入ることができた。
銀婚湯の貸切野天風呂は個性あふれる湯ばかり
ここの湯は広大な敷地に5つの野天風呂が点在していることが特徴。
宿泊者限定の野天風呂は貸切のため、受付でカギをもらい入り終わったら受付に返すというシステム。
入りたいところが使用中の時は帰ってきたら部屋に連絡をくれるとの事。
地図を見ると野天風呂は名物の吊り橋の手前に2つ、吊り橋を渡った向こう側に3つ。
泉質は基本的に弱アルカリ性ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉。5つの源泉の使用状況で若干成分は異なっています。湧出量は5つの源泉併せて毎分170リットルとのこと。
複数の源泉からどのように流れているか説明あり。温泉へのこだわりを感じます。
庭の小道を歩いて温泉に行く。
8月の庭は、セミの大合唱。
森が揺れているのではないかと思うほどの多くのセミの鳴き声が聞こえる。
近くの木を見ると、常に5、6匹は止まっている。
アブ対策に虫除けスプレーを振りかけて、虫除けリングもつけ、最終的には頭から虫除けネットかぶろうと、そちらも持参。
宿に近い順から紹介します。
かつらの湯
1番近いこちらでも受付から徒歩5分ほどかかる。しかし、緑の中の散歩は本当に気持ちが良い。
野天風呂のカギ。ただの板なんだけど、ちゃんとカギになっているのが楽しい。
現れたのはまるでツリーハウスのような野天風呂。自然の樹木の特徴を活かして作られている。
階段を上りドアを開けるとそこには岩をくりぬいている湯船がある。なんと、駒ヶ岳の三十五トンの巨石をくりぬいた湯舟とのこと!
右側から湯口があり左側に抜けています。
靴入れには苔と幼木が生えている。
野天風呂は屋根がなく、落ち葉やごみが入ってきてしまうため、どこも自分で網で汚れやなどを取ってから入浴する。
脱衣所はタオルや服を置く棚があるのみのシンプルな造りだが、大木の存在感が圧倒的で入浴しながら見上げてほれぼれしてしまった。
湯の表面が熱く、下がぬるくなっているのでかき混ぜて入るとちょうどよかった。
目をつぶると圧倒的なセミの鳴き声、川のせせらぎ、湯の注ぐ音。
見上げると木漏れ日。「露天」風呂ではなく、「野天」風呂となっているのがよくわかる。
杉の湯
杉の湯はかつらの湯を通り過ぎて、さらに林の奥へすすんでいくとある。
野天風呂の中でここだけが小屋になっている。杉の木の林の中に、まるで茶室のようなたたずまいでそこにある。
中に入ると明かりがなく暗い。写真で見るよりかなり暗く感じてはじめは少し怖かった。
目が慣れてくるとふしぎと落ち着くようになってくる。
湯温は42℃くらいかな。浸かるのにちょうどよかった。
外はうるさいくらいのセミの音だったのが、この小屋の中ではほとんど聞こえない。
暗さもあり視覚と聴覚が休められ心からリラックスできる。温泉の香りと木の香りが際立ってくる。
小屋の中には簡単な棚があるのみ。
虫の心配もないところがこの湯のいいところでもあり、素直に掛け流しの濃い湯を楽しむことができた。
吊り橋を渡っていく野天風呂
雑誌の記事で「吊り橋をわたっていく野天風呂」などと記載されることがあり、気になってはいたのだけどきっと簡単な造りのものかなと考えていた。
ところが、吊り橋は思っていたよりも本気の吊り橋だった。
幅20mはあろうかというところを渡している。
しっかりと固定されているので安心感はあるが、高所恐怖症の人はもしかしたら渡れないかも。
高さは10mくらいかな。歩くたびに揺れる。縦揺れは我慢できるけれど、ふとした時に横に揺れるのがとても怖い。吊り橋効果で一人でもドキドキしてしまう。
「子供は保護者と一緒にわたってください」とあるけれど、体重の軽い子供だけのほうが揺れにくいので小学生以上の子供であれば一人で渡ったほうが怖くない。
もみじの湯
吊り橋を渡り終えるとすぐに看板があるので迷うことはなさそうだった。
ただ吊り橋を渡った後から森が深くなり、急にアブの量が増えた感じがする。
耳元の羽音がストレスなのでタオルを頭からかぶって対策。セミはもちろんたくさんいる。
もみじの湯の名の通り、もみじが植えられており緑とのコントラストが美しい。
温泉の目隠しは隙間が多いが、広大な敷地の中にあるのでそれほど気にならない。
浸かるには少し熱かったので、ここは足湯だけ。
どんぐりの湯
吊り橋を渡ってもみじの湯と反対に行くとどんぐりの湯がある。
ミズナラの道。秋にはどんぐりだらけになって子供がトラップされるんだろうな。
どんぐりの湯は階段を降りていくと湯船がある。しかも川を眺めながら入浴することができる絶景の湯。
湯口はやっぱり湯の析出物がびっちりで温泉の濃さが想像できる。
少し熱めの湯に川を眺めながら入る。ぬるぬる感があり、すこしと塩味と鉄の感じが残る気持ちの良い湯がどんどん注がれている。
トチニの湯
野天風呂の中で一番遠く、受付から片道15分かかる。
成分としては一番濃い湯とのことなので、銀婚湯訪問前は絶対に行きたい湯だった。
しかし他の湯をめぐっている間に満足してしまって、途中まで行ったもののアブがすごく断念した。
今思えばなぜ行かなかったのかと思うが、宿題をのこしたということにして再訪を誓う。
野天風呂の注意点
野天風呂は、脱衣所も簡素で自然の中にあるので枯れ草などが落ちていることも多いことが難点。野湯なれしていないと気になってリラックスできないという人もいるかもしれない。
8月はセミとアブがとにかく多く、虫が苦手という人も難しいと感じた。
冬は冬季閉鎖の湯があるし、日が沈んだあとは入浴不可のため入れる時間も短くなってしまうところに注意。
ベストシーズンは新緑と紅葉の時期だろうか。
野天風呂はお湯が素晴らしいのはもちろん、どの湯も独創的で自由だった。
子供が自由研究で「こんなお風呂があったらいいな」と考えたものを、そのままつくってしまったかのようなお風呂。
唯一ここにしかないと思える。
来てよかったな、また来たいなと思える場所だった。
内湯は夕方と翌日で入れ替え制
館内にある日帰り入浴可能な渓流の湯とこもれびの湯も満足度が高い。岩風呂や木の湯船には温泉の析出物がつき、露天風呂は川のせせらぎが聞こえてくる。
ぬるぬる感のある湯がきもちよく、休み休みつい長湯してしまう。水分補給できるような水飲み場が浴場の近くにはないので、自分で持っていくか、部屋に戻ってから水分補給する必要がある。
立派な一枚板の休憩所で湯上がりのひと休み
貸切家族風呂は宿泊者限定で、空いていれば自由に入ることができる。
足湯もあるので旅の前後に語らうもよし
入り口前には足湯がある。この足湯が思いのほか気持ちよかった。
これまた大木をくりぬいたワイルド湯船に丸太イスという誂え。
川のそばにあるためならんで川を眺めながら足湯というのも風情がある。
足で湯を混ぜながらちょうどよい湯加減にしていく。
銀婚湯は湯が素晴らしいだけでなく、お風呂はこんなに自由でいいんだと感じさせてくれる唯一無二の温泉宿
ここの湯の良いところは湯めぐりがそのまま軽運動になっているところ。数分のウォーキングで体をほぐしてから浸かるプログラムに自動的になっている。
湯のためだけでなく早朝や夕暮れ時などのんびり散策するのにもちょうどよい。
良い温泉にはよい散策路があるなというのを改めて実感した。