2024年7月に新デザインの紙幣が発行されます。
その新紙幣を印刷している国立印刷局を見学することができることを知っていますか?
2023年4月に東京都北区にある国立印刷局東京工場に見学に行ってきました。
国立印刷局での見学では、
ガラス越しに大きな機械でお札が印刷されてる様子を見ることができます。
世界最高レベルの偽造防止技術があるなど、
身近だけど意外と知らないことの多いお札の世界を見に行ってきました。
国立印刷局東京工場の見学予約方法
紙幣を扱う工場ということもあり、見学には厳重な手続きが必要です。
と、いっても電話予約だけでなくインターネット予約もできて基本的には他の工場見学と同じフローです。
異なるのは参加前までに参加者全員の氏名と住所の名簿を提出しなくてはならないところ。
厳重さに緊張感が高まります。
工場見学は人気のため、この日の予約は予約開始5分で満席になったとのことでした。
コロナ禍が明けて今は枠も増えてきているので
予約も取りやすくなってきているのではないでしょうか。
毎週火曜と木曜の平日のみの開催で、料金は無料です。
国立印刷局のサイトに注意点や概要が記載されています。
https://www.npb.go.jp/ja/event/kengaku/tokyo.html
国立印刷局東京工場の概要
国立印刷局は、日本銀行から発注をうけ日本銀行券(紙幣の正式名称)を印刷しています。
日本銀行券の発行枚数は財務省が製造計画を立てています。
ちなみに硬貨は日本国が発行しており、造幣局で造っています。
紙幣以外にも、法令等の政府情報の公的な伝達手段である官報、旅券(パスポート)、郵便切手なども製造しています。
独自の研究開発を重ねて高度な偽造防止技術をもっています。
2024年7月に発行される新紙幣にかかれる肖像は
一万円札は渋沢栄一、裏面は東京駅丸の内駅舎
五千円札は津田梅子、裏面は藤の花
千円札は北里柴三郎、裏面は葛飾北斎の富嶽三十六景
デザイン等について詳しくはこちらにあります。
https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/index.html
国立印刷局東京工場の見学ルート
受付
国立印刷局東京工場は東京メトロ南北線の西ヶ原駅が最寄り駅です。
当日は遅刻厳禁、身分証明書も忘れずに持ちましょう。
受付で人数確認と身分証確認をし、簡単な手荷物検査があります。
この日は子ども連れの方が多かったです。
見学はおよそ90分でセキュリティ上途中退場はできません。
工場内へ移動
おおよそ参加者が集まったら工場内に移動します。
セキュリティ上画像撮影が許可されているのはごく一部のみ。
工場外観も撮影NGです。
ピリピリの緊張感がある、、、のかと思ったら案内の方はとてもフレンドリーで、
国立印刷局の小話を教えてくれます。談笑しながら工場内にはいります。
室内に入る途中にも、窓のない現金輸送車や、どでかいエレベーターなどの存在に密かにテンションが上がります。
ビデオ学習
まず座学で30分程度の映像を見ます。この部屋にはお札の壁紙の撮影スポットや新デザインのお札の解説ボードがあり、トイレ休憩の合間などにみることができます。
ビデオは国立印刷局の業務や、お金の歴史・製造過程について。
子供向けにキャラ設定されたお札マン(100メンサツ)が解説してくれます。
映像が終わると各自決められたロッカーに荷物をあずけ、班に分かれます。ここで携帯電話をロッカーに置いていくように指示がありました。
展示室と工場見学と順番をずらして見学します。
お札の製造工程見学
座学の部屋から製造している建物へは徒歩で移動します。
移動途中にも案内の方が敷地の説明をしてくれます。
工場敷地内には紙の原料である「みつまた」が植えられており、
実際に生えている植物を初めて見る方も多かったようです。
国立印刷局は関東大震災で前の建物が被害を受けたため、西ヶ原に移設されました。
以前の建物の屋根にあった鳳凰の石像は震災の被害を免れたそうで、中央の建物の前に飾られていました。
印刷工場では、2階の見学廊下からガラス越しにお札を印刷する製造工程を見学しました。
お札の作る流れはこのような感じ
すかしの入った紙幣用の紙は別工場で作られて納品される
→裏面を印刷
→表面を印刷
→ホログラム貼り付け
→総裁印・記番号印刷
→裁断
(各工程で数の確認を行う)
お札は記番号が印刷される最後の最後までは下のように20枚セットで印刷されるそうです。
盗み防止のためなのかな。
このガラス越しの印刷工程で何と!印刷済みの渋沢栄一札を見ることができました。
渋沢栄一20人セットを遠目で見ることができ、感慨深かったです。
注意)どの紙幣を印刷しているかは製造計画によるので事前にわかるものではありません。
紙幣の製造は予想通りほとんどが機械で一元管理されており、職員の方は機械の管理や細かいチェックをしていました。
裏面が白い製造途中の本物の紙幣を見る機会は他では絶対体験することはできないです。ぜひ、ご自身で見学してほしいです。
案内の方の近くに陣取り、気になっていたことを聞きながら座学した建物に戻ります。印刷ミスがどのくらい起こるのかロス率の話をしたり、ロス率が多すぎると日本銀行から指摘が入るというお話も聞き、
そこは一般企業と変わらないんだな。と、なんだか親近感を覚えました。
展示室見学(ここのみ撮影可能)
座学した建物に戻って、お札の製造工程や偽造防止技術についての展示室を見学します。
パネルだけでなく体験装置があり楽しく見て回りました。
1億円の重さを体験できるコーナーもあります。
紙幣の歴史についてもパネルがありました。
昔は紙を丈夫にするためにこんにゃく粉を入れていた時代もあり、ネズミに食べられてしまったということもあったそうです。
お札の凹版印刷の原板は人の手で金属板に刻みこむそうです。プロ中のプロである工芸官は1mmの範囲に10本以上の線を彫刻できるそうです。
確かに手で彫刻した方が偽造防止には良いのかな。
凹版印刷って見学に来て初めて知りました。版の凹んだところにインクが入り、インキが高く盛り上がる印刷方法のことをいうようです。さわってわかるお札独特の手触りが生まれます。
版画のように凸になっているところにインクがつくものは凸版印刷。版の形で分類されるんですね。
印刷の版が凸状の場合は凸版印刷、版が凹状の場合は凹版印刷。ほかに平版と孔版を加えて4版式に大別されるようです。
国立印刷局ではインキ自体も開発しているとのこと。
お札独特のザラザラな肌触りを生む凹版印刷用のインキや、傾けるとピンクにみえるパールインキ、ブラックライトを当てると光る特殊発光インキなどを開発しているようです。
五千円札、一万円札に貼られるホログラム。
シール状になっているのを見るのはレア。
1億円の重さを体験できるコーナーやお札壁紙をバックに記念撮影できるコーナーもあり記念になりました。
廊下に小さなお土産コーナーもありました。
お札せんべいやお札デザインのタオル、ペンなどがあります。
へぇ~なこと
紙幣の発行は明治初期に始まり、当初国内には高度が印刷技術がなかったため、ドイツやアメリカに製造を依頼していました。高額だったこともあり1877年に国内第一号の紙幣を発行しました。それから現在まで150年近く研究開発を重ねて、今では世界トップクラスの技術をもっています。
偽造防止技術の詳しい内容は印刷局のページにわかりやすくまとめられています。
https://sp.npb.go.jp/ja/intro/gizou/genzai.html
新紙幣には3Dホログラムの技術が使われるということ。早く手に取って体験したい。
・お札にも寿命がある 1-5年 流通して日本銀行に戻ってきたときに監査されて廃棄されるとのこと。
・コロナ禍で流通や外出自粛など経済活動は滞ったけれど、国立印刷局では材料の備蓄は豊富にしていたため日本銀行券の欠品にはならなかったとのことです。当たり前だけどほっとしました。
当たり前に使っている紙幣にこんな秘密が隠されていたなんて。知らないことを知ることができて満足した見学でした。