チェコのカルロヴィヴァリ(Karlovy Vary)という街をご存知でしょうか。
チェコといえば首都プラハが有名ですが、
聞きなれないこのカルロヴィ・ヴァリという街が2021年に世界遺産に登録されました。
世界遺産に登録されたのは、ヨーロッパの大温泉都市群として11の温泉地のうちの一つとしてです。
その中でカルロヴィヴァリは特に温泉水を飲む、飲泉文化の聖地として注目されています。
同じく世界遺産登録された大温泉都市群の中でベルギーのSPAに行った際の旅行記はこちら。
カルロヴィ・ヴァリは世界的にみると知名度は少ないです。
しかし、ヨーロッパでは有名な温泉地。
10年前の旅行記になってしまうけれど、旅を振り返って飲泉について考えてみます。
カルロヴィ・ヴァリの場所
カルロヴィヴァリはドイツ名でカールスバッド(Carlsbad)とも言われています。
プラハから急行電車で3時間20分。バスで2時間半。
ゲーテやショパンも訪れたと言われている街で、人口は約54000人の温泉リゾート地。
街の中心にテプラー川がながれ、川沿いに街が発展しています。
日本ともつながりがあり、姉妹都市に草津市があったり、登別カルルス温泉はこの街を由来としてつけられたようです。
私は電車をつかったので、駅から中心部まで20-30程度歩きました。
途中見つけたタクシーで街の南側のホテルパップまで行って駅まで戻るルートで散策。
カルロヴィヴァリの泉質、効果、効能
パステルカラーに彩られた美しい町並みの中に12もの源泉がわき、16の飲泉所が点在する飲泉の聖地。
飲泉についてはすべて無料で提供されています。
1、泉質
源泉の成分は、どの飲泉所もほとんど同じで、「炭酸ガスを含むカルシウム-マグネシウム-炭酸水素塩泉」。
温度とCO2濃度がそれぞれ異なっています。
ヨーロッパの温泉は多くが非火山性であり低温のことが多いです。
しかし、ここは例外的に湯温が高く40から70℃台もあって、ヨーロッパでは珍しく湯けむりの上がる温泉地なのです。
2、効果・効能
入浴すると筋肉や関節などの運動器、消化器の疾患、新陳代謝の改善に効果があり、
飲泉すると消化器や肝臓障害などに効果があると言われています。
3、そのほかのおもしろ特徴
ガイドブックにはこんな記載もありました。
この温泉は美しく医学的に有用というだけでなく、物を石に変えてしまう。
公式ガイドブックより(筆者訳)
一定時間入れておくと物がaragoniteに包まれてしまう。
”aragonite”とはアラレ石のことのようで、炭酸カルシウムの結晶のこと。
飲泉所の中には湯の華の塊がみられるものもあり納得できます。
この町の人は温泉にいろいろなものを漬けたようで、花や赤ちゃんのファーストシューズまで温泉水につけたそうです。
つぼや紙でできた花を石化させたものがお土産屋さんに売られています。
湯の華がつく温泉はたくさん入ってきましたが、それをお土産にしようという発想はなかった。
「思い出のファーストシューズを湯の華で永遠に!」
こんなサービスが売れるかもしれません??
飲泉めぐりの楽しみ 飲泉カップとスパワッフル
飲泉所を巡る前にまず手に入れたいのが温泉カップ(Spa cup)
取っ手がストロー状になっています。
もちろん紙コップでもいいんだけど、熱々な温泉もあるし、様々なデザインで自分へのお土産にもぴったり。
お土産屋さんで磁器製のものが100-200CZK (640-1280円)で売られています。
他にも高級な銀製のもの(925CZK、6000円くらい)や、
スタイリッシュなホテルパップオリジナルカップなどバリエーション豊かで選ぶのも楽しい。
日本では使い所はあまりないですが、私は家で花瓶やつまようじ入れとして使ったりもしています。
(この前は子供がぶどうジュースを飲んでいた。)
もう一つの名物、源泉を使ったスパワッフルはかるい口当たりで、おいしくない温泉水のお口直しにぴったり。
スパワッフルを片手に街並みを楽しみながら、
さあ、行こう!飲泉散歩!
カルロヴィヴァリは飲泉の聖地 16の飲泉所
飲泉所は1-16まであり、14.16は郊外にあるため日帰りだと行くのは難しいです。
多くは中心部に集まっているので2時間ほどでまわることができます。
コロナーダと呼ばれる飲泉所が4つあり、チェコ語と英語名で呼び方が異なるので注意が必要です。
私は007カジノ・ロワイヤルで登場したホテルパップを起点として南側から巡りました。
このルートだと1番から回れるのでわかりやすくておすすめです。
ウジーデルニー・コロナーダ(Hot Spring Colonnade)
ウジーデルニーコロナーダVřídelní kolonáda (Hot Spring Colonnade) には1番の飲泉所があります。
ここには飲泉場とともに間欠泉があるのが特徴。
間欠泉は毎分高さ12mで吹き出しています。
地球の呼吸と言われる間欠泉。
ぜひその勢いを楽しんで欲しいです。
違う温度に調整されている飲泉所が並んでいて、70度を超える源泉もあります。
早速、私もスパカップで飲んでみた。
……うん、おいしくないね。
鉄分と塩味を感じる。
ところが温度が変わると不思議と味わいが変わるのでどんどん楽しくなってくる。
スパワッフルが食べ進む。
トルジュニ・コロナーダ(The Market Colonnade)
トルジュニ・コロナーダTržní kolonáda (The Market Colonnade)
No.2~5の飲泉所があり美しい木造建築が特徴です。
飲泉所に湯の華が析出しているのがよくわかり、何を石化させようか考えてしまいます。
ムリンスカ・コロナーダ(The Mill Colonnade)
ムリンスカ・コロナーダMlýnská kolonáda (The Mill Colonnade)
No.6~11が連続してあります。
順番に味見をしながら中を歩くのですが、正直味の印象はないです。
なぜなら温泉より建築がきれいすぎてテンションがあがってしまったからです。
ネオルネッサンス様式の美しい建物。
連続した柱、美しい石畳。
中世にタイムスリップしてしまう。
オーケストラの音楽が聞こえてきて街を歩くだけでも楽しい。
No.9のところで飲んでいると地元のおばさんと一緒になりました。
「このお湯は効くけど飲みすぎちゃだめよ。2杯までにしときなさい。」とのこと。
確かに塩味がつよく効きそうな感じ。
そんなやりとりに、心が温まります。
サドヴァー・コロナーダ(The Park Colonnade)
サドヴァー・コロナーダSadová kolonáda (The Park Colonnade)
No.12と15があります。
No.15はスネークスプリングSnake Springと呼ばれており一番印象的でした。
ほかの源泉よりミネラル分が少なくCO2濃度が高く、炭酸濃度が1600mg/Lあります。
炭酸もしっかり感じられ、ちょうどいい鉄分の味が飲みやすいです。
住民と思われるおばあさんが家に帰る途中か、ペットボトルに入れてさっと飲んで歩いていく。
こんな風に日常的に飲んでいるんだろうな。いいな。
ヨーロッパでは薬局のシンボルマークに蛇と杯が示されることが多いです。
蛇が杖に巻き付いたモチーフはギリシア神話に登場する、
名医アスクレピオスの「アスクレピオスの杖」からきており、
医学のシンボルとして世界保健機関(WHO)や米国医師会でも使用されています。
この蛇の巻き付いた杯は「ヒュギエイアの杯」と呼ばれ、
アスクレピオスの娘のヒュギエイアが持っていた杯で、薬学のシンボルとして使われているのです。
ぜひそんなことを考えながら、この源泉を飲んでみてほしいです。
No.13 薬草酒ベヘロフカ(BECHEROVKA)
飲泉所No.1-16のうちNo.13番目は世界中で飲めるといわれています。
なぜならNo.13はこの地で造られている薬草酒の「ベヘロフカ(Becherovka)」だから。
天然水と数々の薬草を用いて作られたアルコール度数38度のお酒です。
日本でいうところの養命酒的な飲み物で、
アルコール度数は高いですが飲みやすいので日本に帰ってからも楽しめます。
ところどころ抜けているところはありましたが、
No.1-15までなんだかんだ飲み続けてしまいました。
飲泉の注意点は概ね日本と同じと考えられます。
量は1日500mL程度まで。
泉質を考えると心臓病、腎臓病で治療中の人は味見程度にした方が良いでしょう。
長くなってしまったので続きます。